cocomat's BLOG わかってないひとの書評

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【新世界より(下)】そこには紛れも無く新世界があった。【読書感想】

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先日、電車が事故で止まってしまって、いつもと違うルートで会社に向かったのですが、あまりなれない電車の中で目の前の人が熱心に今自分が読んでる本と同じ本を読んでいました。ブックカバーをつけずにしおりも使わない読書スタイルは割と好感が持てるし、同じ本を読んでる人を見ると親近感がわきます。結構後半のページを読んでいたので「先輩」って感じでした。

こんばんは。コマツです。

ついに読み終わりました。『新世界より(下)(貴志祐介)』。長かった。とても長かった。とても一気読みをするには骨が折れるシロモノでした。再読しようと思うにはちょっと敷居が高すぎるかもしれません。

新世界より(下) (講談社文庫)

新世界より(下) (講談社文庫)

 

 全てはだいたい想定の範囲内。なのになぜハラハラさせられるのか。

やはり下巻、クライマックスとアクション的要素、ドンパチ感は切っても切り離せない関係にあるのでしょうか。例によってこの巻も終始冒険と戦闘でした。しかしその分ページの進みは早いですし、それ以上にとんでもなく引きこまれました。

こういったたぐいの物語は読んでいるうちに「この流れ的にもうすぐこういうアクシデントがくるな」とか「黒幕はこいつで、この人はこういう事情でこういうことをしているんだ」とかある程度予想を立てられてます。それは今回も同様にありました。しかし、その予想は当たるのですがそのさらに先の先。予想の向こう側の、でも矛盾もしないし非常に理屈にかなった展開が待ち受けています。

ご都合主義など一切ありませんでした。この物語の登場人物は戦うべくして戦い、勝つべくして勝ち、必死に生き続けているのです。ここまで、すべての展開がなんの疑問もなくすんなりと入ってくる物語も珍しいように思えます。

その要因として、上巻の半分を費やした非常に長い世界観の構築と細部にまで渡るキャラクターの設定にあるのではないかと思います。策士は最後まで策士だし、時間とともにキャラクターたちもしっかりと人格形成がなされています。意味のない事件など一つもありません。物語の中で起きた出来事はしっかりと長い年月をかけてキャラクターを成長させ、世界を動かしているのです。伏線を回収するというよりも、その出来事がジワジワと波紋を呼びやがてその結果に行き着くという方が正しいと思います。バタフライエフェクトというと大げさでしょうか。

 想像力こそが、すべてを変える。

物語はこの一文で幕を閉じます。本当にこれに尽きるのではないでしょうか。メタ的な要素も含め、想像力というものがどれほどの可能性を持つものなのか。物語というあくまで想像上の世界ではあるのですが、そこにはキャラクターの息遣いがしっかりと宿り、全力で生きている紛れも無い新世界がありました。


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おやすみなさい。

 

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