【オートフィクション】ノンストップ潑剌ネガティブ【読書感想】
「棚から牡丹餅。と言ってもぼたもちを受け取れる位置にいなければ棚から牡丹餅が降ってきても意味が無い。」と、どこかの偉そうな人が学校か何かの講演でしゃべっていた。気がする。確かにそのとおりだと思う。いつも棚が狙いをすましてぼたもちを投下するほど世の中は都合良くはできていないだろう。逆を言えば自分がそこに向けて歩んでいるとヤブからぼたもちは降ってくるのかもしれない。
こんばんは。コマツです。
そうやってこの本はコマツの左上から降ってきた。せっかく降ってきたのだからということで『オートフィクション(金原ひとみ)』読了。ところで「棚から牡丹餅」はぼたもちが棚から降ってくるものなのか?
女性作家独特の雰囲気。
時系列を遡って進む物語、なんだか晴れない雰囲気、誇り臭く、薄暗い感じはどうにも『ホテルローヤル』を思い起こさせる。どちらも女性の作家だが、これは女性特有の空気感なのだろうか。男性の書いたものにこういった空気を感じたことはまだない。
物語の雰囲気は時代を遡るに連れてだんだんと寂しく寂れたものになっていくような気がする。はじめからマシンガンのようにネガティブの波が押し寄せてくる。感情の起伏がぐるぐるとめまぐるしく回って、「この人がポメラニアンか何かだったらまだ可愛げがあるのに。」などと思う余裕はあるのだが。あまりにもネガティブが交錯しすぎてある種のプラシーボ効果のようなものを思い起こさせられた。
卑屈なまでのネガティブ。しかし他人事ではない。
この卑屈さ、弱さは決して他人事ではないとおもう。人の顔色をうかがう、声色に気を使う。相手の一挙一動がふとした拍子にすごく気になって、自意識と自己嫌悪に混乱して嫌われるくらいなら関わるのをやめよう。といって余分な交友関係をパージしながら今に至る。が、自分が考える以上に相手は大人だし、そんなこと考える暇もないだろう。大体そこまで自分のこと考えるんだったら今日の晩飯の献立や、恋人のことを考えたほうが遥かに有益であるし、世の中そこまで悪い人なんていないんじゃないか。そう思えるようになって、同時に今までちょっとだけもったいないことをしてきたなと、がっかりもするのだが。
かなり濃密に暗い作品のような気がする。ここ最近SFや冒険ものばかり読んでいたので、割といいパンチを食らった気分だ。
Angel Haze - Wicked Moon lyrics
おやすみなさい。
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