【深夜特急5】青春の延長戦。旅の中で少年になっていく。【読書感想】
もうすぐ旅が終わりに差し掛かる。そんな寂しさは決して主人公だけが感じているものではないのだろう。今までどのくらい多くの人々がこのカッサンドルを手にとったかは分からないが、やはり皆一様にしてこの冒険の終わりが垣間見え始めたことにある種の寂しさを感じているのではないだろうか。生活を投げ捨てて旅に出たものもいるという、一概に大げさとも言えないのではないかと思う。
こんばんは。コマツです。
もはやここまでくると読者は主人公に憑依するのではないかと思う。主人公と一緒にワクワクし、気だるくなり、喜び、寂しくなる。そう思いながら『深夜特急5(沢木耕太郎)』読了。
腹痛だって国境超えではシャレにならない。
通勤電車の中で刺すような腹痛に襲われることがある。人によっては毎朝襲われるというとても不憫な人もいるようだ。程度の違いはあれど、お腹は、時々、痛くなるものだ。それが通勤通学の途中だったらまだいい。最悪途中下車したところで遅刻で済む。もしそれが遅刻ですまないような環境だったとしたらそんな環境今すぐ飛び出して旅に出るべきなのだ。あいにくコマツはそういった過酷な環境にはいないので旅に出るタイミングを致命的に逃しているのだが。
そんな腹痛も国境越えのバスではわけが違う。泥酔して今にも気絶しそうなまま飛び乗った終電よりもおそらく過酷なのだろう。
そんな洒落にならない。しかしコミカルなシーンからこの巻は始まる。
相変わらず主人公はいろんな人と出会いコミュニケーションをとっている。
旅の中で少年に回帰する。
今回は特に少年が多かったように見える。どこの国でも少年は好奇心旺盛で年寄りはおせっかいということだろうか。たかがコイン、たかがみかん、たかが紙飛行機。キラキラした目でそれらを見つめる少年たちをうらやましいとすら思ってしまう。
旅人もまた少年なのかもしれない。だから年寄りにはおせっかいをやかれ、少年とは異様に気が合うのかもしれない。
私はもう一度引き返し、また人差し指を一本立てた。少年は別に気を悪くした風もなく、紙袋にまたミカンを入れ始めた。それがやはり形も色艶も悪いものであるのを見て、今度は声を上げて笑ってしまった。
「なかなか頑張るじゃないか」
私が日本語で言うと、少年は意味がわかったかのように晴れやかに笑った。
旅ももう「壮年期」に差し掛かる。終わりが見えてきてしまった。どのように終わるのか。どのように終わればいいのか。旅の終わりをじっくりと楽しみたい。
Washed Out - Feel It All Around (Live on KEXP)
おやすみなさい。
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