【半島を出よ(上)】様々な視点から描かれる『半島を出よ』という名のアンリアル【読書感想】
先日、電車の中でまだ一歳くらいの子供を抱っこしたお父さんサラリーマンが目の前にいました。小さい子と目があったらなるべく微笑みかけようと心がけているので、その日も同じように微笑みかけたのですが、無視。残念。と思いながらも見ているとその子がやたらとキョロキョロし始めて、顔がお父さんの顔とすれ違うときに「チュッ」ってキスしたんです。とても鮮やかなキスでした。お父さんも照れたように微笑んで。「こんな子も大きくなったらお父さんの靴下と一緒に洗濯しないで。」なんて言うようになるのでしょうか。ところで何で靴下って靴下っていうのでしょう。
こんばんは。コマツです。
『昭和歌謡大全集』についで『半島を出よ(村上龍)』に挑戦中です。
ここまで読むのがしんどい本もそうないのではないかと思います。しんどくて面白くなければ読むのをやめればそれで済むのですが、そういうわけにもいかず、小説『半島を出よ』を通じて村上龍に拘束されている気分です。
リアルとアンリアルの境界。
衰退した日本政府。力を失いつつあるアメリカ。日本に攻め入る北朝鮮。この物語はかなり現実にコミットしているのではないかと思います。「一歩間違えたらこんな世の中になっていてもおかしくはない」というのは言いすぎでしょうが、こういう状況は世界のどこかにいつも存在していて、この小説ではたまたまそれが日本だった。というようなとてもリアルな状況が描かれています。
正直いって難しいし、状況の起伏も上巻は少ないので読みにくいです。退屈で苦しいです。しかし、何故か読むのをやめる気にはなれません。それどころか、そのリアルさも相まって現実とこんがらがることもあります。昼休みの仮眠明けにラジオのニュースを聞いて「あれ、いま福岡どうなってるんだっけ」みたいなことにはなります。意識の見えないところでジワーっと広がっていく何か魔力のようなもので、この戦争を見届けなければいけない。という気にさせられるのです。
いろんな人の視点から見る『半島を出よ』という社会。
その物語の壮大さは巻頭に乗っている登場人物の数からも伺えます。正直ここまで登場人物が出てくる小説もそうないのではないでしょうか。そしてさらにそれらの人物のバイオグラフィーが物語内で丁寧に説明されることが多々あるので自然と文章の量が多くなります。
そしてさらに章ごとに立場の違う様々な人物の視点から切り取っているので読み手としては非常にこんがらがりかねません。読みながら迷子になり、さっきの章で脇役だった奴が主役になります。ある一つの事象に対しての超精密なシミュレーションなのではないかというようにそれぞれいろんな人間の視点から「北朝鮮による福岡占領」が描かれているのです。
下巻では『昭和歌謡大全集』の奴らが動き出しそうな予感なので、それに期待して、もう少し頑張ってみようと思います!!
Franz Ferdinand - Take Me Out live at T in the Park 2014
おやすみなさい。