【パーク・ライフ】中編が2つ。そのうちの一つは捨ておいて、芥川賞受賞作を楽しむ。【読書感想】
地元の古本屋で100円コーナーを物色してきました。結果は七冊。欲しかった本や、グーグルで「小説 おすすめ」と検索すると必ず上位に食い込んでくる本が100円で買えたので大満足です。半分は欲しかった本。半分は表紙が面白いとか、薄くてあっさり読めそうだとかでなんとなく手にとって買ったもの。当たり外れはあるにしても外れたら外れたで100円なのだから文句は言うまいと決め込み満足して古本屋をあとにしました。
こんばんは。コマツです。
全く異なった中編2つからなる構造は吉と出たのか。
芥川賞受賞作だそうで。しかし、コマツには芥川賞受賞作が一概に面白い読み物かって言ったらそうでもないのかもしれないというイメージがあります。以前大学時代の友達に「版画もやりつつ、小説も書いて芥川賞でどうのこうのした芸術家がいるんだ。」という話を聞いたことがありました。村上春樹を教えてくれたのも、その友達だったので興味津々に「え、なにそれ面白そうじゃん!」と返したのですが、彼はとてもつまんなそうな、面倒くさそうな顔で「芥川賞なんて面白いものばっかりじゃないよ。」と言ってその話はそこで打ち切りになってしまいました。といっても、『限りなく透明に近いブルー』は読みにくくとも面白かったですが。
この作品は、タイトルであり芥川賞受賞作の『パーク・ライフ』と『flowers』という中編二編からなる作品なのですが、『パーク・ライフ』と『flowers』が全く別のベクトルの小説で、その相乗効果で『flowers』がより生々しく見えてしまって、読みながらちょっと引いてしまいました。場合によっては『flowers』は読まないほうが吉と出るかもしれません。読む人によるのかもしれませんが。
薄らぼんやりとして綺麗な叙情的シナリオと言葉遊び。
『パーク・ライフ』では大人の青春のようなものが叙情的というか、淡々と、粛々と、あっさり描かれていて、なんとなく、本当になんとなく薄らぼんやりと映画の『四月物語(岩井俊二)』的な雰囲気とリンクしました。
物語の中で起きる物事に意味や啓示がまるでなかったとしても、それらの言葉を使って一つのイメージを共有しているのではないかといったような気になります。そしてそれがより明確になっていくに連れてそれに意味を見出したくなり、なにか掴みかけるか。といったところで物語が終わります。綺麗でどこか寂しい感じが無性にアツいです。
読み進めていくとシナリオと関係のないところで、言葉遊びというか、なぞかけのようなものが薄っすらと浮かび上がってきます、文章の構成などではなく単語の選び方と使い方によってこの物語で本当に言いたいことを暗示するタイプの文章なのだろうと思います。ちょっと頭を使いながら読まなくてはなりませんが、そこでぼんやりと混乱しながらシナリオを楽しむのもまた一興かも知れません。
前に誰か日本のプロダクトデザイナーが「文章はデザインである」といったようなことを書いていました。おそらく小説にもそれはいえることで、それは一つの物語にも、それらが集まった一冊の本にもいえることなのではないかともいます。
おやすみなさい。