cocomat's BLOG わかってないひとの書評

このブログは、本や美術展等の感想とその他ムラムラっとした雑記も交えてお送りいたします。

【冒険の国】終始低気圧な雰囲気。生々しい人間描写。嫌に共感してしまう弱さ。に、思わず読み込んでしまう【読書感想】

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週末、待ち合わせのために電車に乗っていたのですが、よくある話なのですが妙に早く駅についてしまって無駄に各駅停車で向かいました。各駅停車だとまぁ座れるし、電車の時間も長いので本読んだり、調べ物したり、ツイートしたり、ゲームしたりいろいろ出来て目的のない感じが割と好きなんですけど、隣りに座ってきたやつが終始激しく貧乏揺すりをしてまして。電車が動いているときはそこまで気にはならないのですが、各駅停車なので急行待ちとかで駅に止まっている時間も長いわけです。そうすると隣の振動というか、揺れがこっちまで伝わってきてその時はゲームをしていたのですが、もろに電車酔いしてしまいました。貧乏揺すりマジ許すまじ。

こんばんは。コマツです。

『冒険の国(桐島夏生)』読み終わりました。珍しく女性作家の作品を手にとってみました。明らかなタイトル買いです。

冒険の国 (新潮文庫)

冒険の国 (新潮文庫)

 

文章の性差について以前考えてみたもののモヤッとするだけでなにも結論は出ず、とりあえず読もうって話なのですが、なかなか手がでないのが現状です。とりあえず100円文庫にあったので買ってみました。

cocomatz.hatenablog.com

雰囲気としては「ザ・曇天」胃もたれしそうな150ページ。

主人公がまわりに翻弄されながら過去を見つめ過去と決別したくてもできないままに淡々と物語は進むっていう感じの作品です。誰も死なないし(過去に死んでしまった人はいるけれど)、セックスもなし、あるのは日常の繰り返しと一つの再会のみです。この作者の他の作品は読んだことはありませんが、とても読みやすく感じました。なんといってもページ数が150ちょっとというのがなんとも良いポイントですね。

しかしその量に反して内容は全くヘルシーではないです。

終始一貫して「ザ・曇天」といったような分厚いグレーの曇り空のような雰囲気で物語は進んでいきます。時代に取り残されながらも目に見えるか見えないかの速さで着実に終わっていく家族の雰囲気がそれに合わさるような気がします。というかこの家族と一人の老人がこの曇天の原因なのは明らかです。終わりゆく家族とその行く末のような終わりかけの老人。華やかさも彩りもありませんがとても鮮明なモノクロがかった描写が広がっています。

認めたくはないけれどどこか共感してしまう弱さと逃避。

主人公は致命的に過去にとらわれています。その過去の記憶を始め、自分の嫌なこと、避けたいこと、ありとあらゆる害から逃げます。逃げた先にまた新しい問題があろうとも構わず逃げようとします。ひたすらそういうことを続ける主人公に胸糞悪いといえば言い過ぎな、でもそれに近いような感情を覚えます。しかしそれは誰にでもありそうなもので、つい共感してしまいたくなるような弱さが胸をかき乱してきます。

なにも起こらないが、何もない日常にまみれる人たちの心理描写というか、人間描写がいやに生々しく癖になります。これ以上の要素を詰め込まれるとおもたすぎて胸焼けしてしまうので、このぐらいの構成のほうがちょうどいいのかもしれません。

薄暗さと、気圧の低い雰囲気に何処か惹きつけられてしまう。そんな作品です。


Halsey - New Americana

おやすみなさい。