cocomat's BLOG わかってないひとの書評

このブログは、本や美術展等の感想とその他ムラムラっとした雑記も交えてお送りいたします。

【空中ブランコ】油断してると良いパンチをおみまいされる。ライトな作風の中に込められた濃厚な人間描写。【読書感想】

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最近やけに眠くなってしまいます。家でも外でも職場でも気づけば一日中あくびしていたんじゃないかって思ってしまうくらい。今日も八時前にうたた寝かましてしまったにも関わらず眠気はあまり覚めないし、職場で昼寝していた時も気づけば昼休み過ぎていて、同期の子に起こされるという失態をかましてしまいました。「春眠暁知らず」とでも言ったところでしょうか。

こんばんは。コマツです。

空中ブランコ(奥田英朗)』を読みました。

空中ブランコ (文春文庫)

空中ブランコ (文春文庫)

 

イン・ザ・プール』に引き続き伊良部先生シリーズです。このタイトル、アニメにもなっていて、その作風が割と好きだったのでちょっと見ていたのを覚えています。確かクマの着ぐるみの医者だったような…。 

cocomatz.hatenablog.com

前作も捨てがたいけど、ヤバいのは完全にこっち。

個人的には『イン・ザ・プール』よりはるかに面白いです。大枠はほとんど全く変わらないのですが、ディテイルにとても共感と魅力を感じられる作品になっている気がします。確かにライトさで言うと『イン・ザ・プール』には劣りますが、そこに少し人間臭さを入れ込んだような雰囲気に仕上がっている気がします。伊良部先生のひょうきんさとそれに振り回される患者のドタバタ劇と言うのは残しつつも、この『空中ブランコ』では、そこに患者の生い立ちが少し詳しく書いてあって、それが病気につながっているのではないか、とか。いい加減溜まっていたものが爆発して思いのたけをぶちまけるシーンの勢いとか情熱になかなか胸がアツくなりました。

『女流作家』に込められた仕事に対するヴァイブス。

特に最後に収録されている『女流作家』のラストには目に熱いものすら浮かんでくる始末。別にお涙頂戴の感動モノなんかじゃ一切ないし、こんな作品だから「さ、スカッと泣いて気晴らしするか」みたいな心構えで読むわけでもないのに、キャラクターのセリフの勢い、仕事に対する情熱、理想と現実の間で覚える歯がゆさなど業界、業種が好きなら誰でも一度は思うけれど声を大にして言いにくく胸に溜まってしまうアレが放出する様を見ていると本当にこのキャラクターは現実に存在していて、今そいつがブチ切れているところを自分が目の前で見ているのではないかという気分にすらさせられます。それくらい文章から勢いや、音量、熱といったものが感じられる描写に仕上がっていて、軽い気持ちで構えて読める作品なのですが、油断していると最後にやけどしてしまいます。

ほんとうに素敵な作品でした、純度100%のライトさがいいのであれば『イン・ザ・プール』、そこにちょっとスパイスがほしいのであれば『空中ブランコ』をおすすめします。


Shangri-La / Denki Groove (Rising Sun Rock Festival 2014 in Ezo)

おやすみなさい。