cocomat's BLOG わかってないひとの書評

このブログは、本や美術展等の感想とその他ムラムラっとした雑記も交えてお送りいたします。

【昭和歌謡大全集】糞ガキが最強すぎて、考えるのもバカバカしくなる。【読書感想】

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週末読み物を切らしてしまったので、地元の市内にある古本屋をめぐってみた。お目当ての本は決まっていて、割と早々に二冊購入できたのだが、どうしてもあと一冊が見つからない。新品でもいいかと見て回ったがやはり見つからない。「そういえば、駅の向こうにクソ早く閉まる古本屋があったな。」と、なにも期待せずにその本屋へ向かったのだが、外観は何の変哲もない雑居ビルの1階にある本屋なのだが、中に入るとそこはゴミ屋敷のような状態で、売り物のはずの本もすずらんテープで縛ってゴロゴロと山になっている始末。なんとか本棚を勝ち取った本たちも規則性のない並びで、本を探すには棚の端から端まで注意深く見なければいけないような状態。挙句の果てにカウンターにいる店主はゴミにまみれたカウンターでめちゃくちゃにでかい最新の液晶テレビ高校野球を見ているときた。「エラいところに来てしまった…。」そう思いながらも値切り交渉をするもあっさり失敗。「また来よう。」そう思わせる魅力があのカオスにはあった。

こんばんは。コマツです。

『半島を出よ(村上龍)』がどうしても読みたくて、そうするにはどうやら『昭和歌謡大全集(村上龍)』も合わせて読まなければいけない気になってしまって。大した期待もせずに読んでみたらこれがとんでもなく面白いときたらもう幸せである。

昭和歌謡大全集 (集英社文庫)

昭和歌謡大全集 (集英社文庫)

 

ディスクガイドではないが、ディスクガイドだ。

 『昭和歌謡大全集』というタイトルだが、もちろんこれは昭和歌謡のディスクガイドなどではない。いや、もしかしたらひどく遠回しな表現にあふれたディスクガイドなのかもしれない。音楽に対する興奮。酔狂。爆笑。『限りなく透明に近いブルー』とは打って変わってありとあらゆる情景や表現が読むものをしきりに笑いへと誘ってくる。

馬鹿言って笑って、酒飲んで、笑って。まるで青春。これぞ青春といった雰囲気。怖いものなどなにもなく自分たちが世界の中心で、自分たちは最強だと錯覚してしまうくらいの世界の狭さ。滑稽だけれど、どこか懐かしい酔狂ぶりが愛おしくなる。

シリアスもグロテスクも吹き飛ばすくだらなさにひれ伏す。

物語の流れとしては殺し殺されの戦争ゲームといったところなのだが、シリアスさは微塵もない。登場人物の殆どが死に頓着していなかったり、あまりに非現実的すぎていたり、取り巻きの人物が素っ頓狂だったり、どこかイカれた奴らだったりするというのもあるのだが。一番の原因は主人公サイドの仲間たちが今流行の『おそ松さん』の六つ子のようにネジの飛んだどうしようもないバカどもだからだろう。

そのためにこの物語のすべてが狂い、その他の登場人物もそれに合わせてちょっとずつ狂ってみないとこの世界じゃやっていけないんだよ!と言っているようである。

もしかしたらこれはギャグ小説なのかもしれない。これを読んで今こうして感想をつらつら書いているのもバカバカしいほどの作品なのかもしれない。というか、バカバカしい。けれども、そのバカバカしさの中にも読んでる人をひきつけ、ページをめくる手を加速させ、読み終わってもしばらくしたらまた手に取らせてしまうような魔力が込められている。

「簡単だよ、調布市を全部、吹き飛ばすんだよ」 

 なにが簡単なのかさっぱりわからないが、彼らに不可能はないのかもしれない。


恋の季節 ピンキーとキラーズ

おやすみなさい。

 

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