cocomat's BLOG わかってないひとの書評

このブログは、本や美術展等の感想とその他ムラムラっとした雑記も交えてお送りいたします。

【ミート・ザ・ビート】面白いとはいえないけれどどこか読んでいて読みやすく心地が良い作品【読書感想】

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この前わけあって休日の朝の早い時間。と言っても10時過ぎとかなのですが、休日の朝10時って言ったら早い時間ですよね?起きてるかも危ういそんな時間に池袋にいたのですが、もうなんか人がザバザバ波打ってて、朝のラッシュかそれ以上に人がいるんじゃないかって。まぁ池袋だからそこにいる人は皆だいたい埼玉県民だったと思いますが、とにかくすごい人で。いくら連休の初日だからって朝からこの群衆。やっぱり我らが東京さんはすげえや!なんて思ったりしてました。

こんばんは。コマツです。

『ミート・ザ・ビート(羽田圭介)』読み終わりました。芥川賞やら、ヤバいやつだとかでいっとき話題になってましたが、コマツは今回が初見になります。

ミート・ザ・ビート (文春文庫)

ミート・ザ・ビート (文春文庫)

 

先日の読みたい本の記事にも書いたのですが、羽田圭介の割にはヤバくなくてヘルシーなのではないかということで、ページ数も少ないということで読んでみました。

cocomatz.hatenablog.com

ありきたりな悩み。葛藤。

想像以上にヤバくなかったです。むしろ「こいつ本当に言われているほどヤバいのか?」と思わせられるほど。わりと淡々と描かれる日常。そこにひっそりと芽生えるちょっとした脱線のようなものへのあこがれと、それを抑える理性。この2つの静かな葛藤を中心に物語が構成されています。

このままだと今まで以上に金がかかってしまう。そのためには今まで以上にバイトをしなければ。でもここでシフト増やしたらいよいよ予備校に行く時間がなくなってしまう。そんなことになったら本末転倒だ。しかしこの先どれだけ欲しいものが出てくるか予想もつかないし…。お金と時間と趣味、と言ったわりと誰にでも共感できるような悩みと葛藤に薄らぼんやりしてしまう19歳の少年。

文章から読み取る葛藤の行く末。

ある種、危険な要素を含んだ青春の1ページなのかもしれません。もっとも、なにを持って危険か、なにが正しくなにが間違いなのかは誰にも決定権はありませんが、あえてここで言うなれば、モラル的なレール上にある一般的な人生プラン対自分の好きなことにすべてを投じて盲目的にそれに人生をかける度胸。の戦いなのかもしれません。

それは主人公の心理描写からももちろん読み取れますが、周りの仲間の特徴からもその構図が読み取れるようになっています。そして終盤の描写では主人公がどの世界に属するのかが示唆されているようでもあります。

面白くはないけれど読み心地のいい作品。

正直言ってエンタメ性は殆ど無くそこまで面白く無いのですが、比較的わかりやすく、読み取りやすい文章になっていると思います。情景はすんなりと思い浮かべられるし、しかもとても鮮明にイメージできるような文章。その物語を通じて、主人公の属性の変化やその流れを読み取るのもたやすく。物語としてというよりも、文章としてとても読んでいてここちの良い作品だと思います。

ただやはり、物語としても魅力にはちょっと欠けるような気もします。そういった本を求めている人にはあまりお勧めできないし、物語の内容的に、女性にもなかなかおすすめしにくい作品なのは否めません。


SPARKLE 山下達郎 1985 2/23~24 神奈川県民ホール Live

おやすみなさい。

【ルノワール展】新美の物量作戦による「ルノワール漬け」とそこから見える印象派の魅力の片鱗【美術館】

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皆さんゴールデンウィークはいかがお過ごしですか。前半の初日は終電を逃し、朝帰り。二日目はその余波で一歩も外からでず、ベッドの上で一日ゲームをし、三日目にやっとまともに外出しました。この記事が上がる頃にはゴールデンウィークも後半戦に突入しているのですが、どうなることやら。ちなみに去年のゴールデンウィークは、一日目は無印良品にパンティーを買いに。二日目は友達とカラオケに。三日目は散髪に行ったのを覚えています。大してかわりませんね。ゴールデンウィークなんて結局そんなものなのです。

こんばんは。コマツです。

新国立美術館で開催中の『ルノワール展』行ってきました。午前11時頃に行ったのですが、既になかなか混んでいました。

ルノワール」てずっと「Le Noir」だと思っていて、何で黒やねん。って思っていたら実は「Renoir」だったと。人の名前だったんですね。危うく恥かくところでした。

renoir.exhn.jp

印象派』ってなんやねん。

まぁこんな調子なもんですから、「印象派」のことだってつゆ知らず。いや、こんなブログやっておいてアレなのですが、コマツは服飾学校の出なので美術とか授業でちょっとやったもののそんなものは右から左で全くの無知なのです。

「なんであんなふわふわした感じの絵がみんな大好きなんだい?日本人。」てな具合ですね。

ということで例によって今回もちょっと調べてみました。

印象派 - Wikipedia

印象派は戸外で制作することで、瞬間的な日の光だけでなく、それが変化していく様子も捉えられることを見つけた。さらに細部ではなくて全体的な視覚的効果を狙って、(従来のように滑らかさや陰影にこだわらず)混色と原色の絵の具による短い断続的なストロークを並べて、あざやかな色彩をそれが振動しているかのように変化させた。

なるほどわからん。印象を描く、その場の雰囲気やヴィジュアルを自分が感じたように表現するとかそんなところでしょうか?いやほんとわからん。なんか恥ずかしいから本気で勉強しようかな…。

ルノワールの波」あるいは「ルノワール漬け」

ただこのルノワール展』かなり本気でルノワールにフューチャーした展示です。オルセー美術館オランジュリー美術館2つの美術館と協力してそれぞれのコレクションの中からルノワールと、それに関連した作品を約100点集めたという、なんという物量作戦。この作品数だけでもう元取れます。というか嫌でもルノワール漬けにされますね。コマツのような印象派さっぱりわかりません。って人でもなんとなく概要はつかめるような、嫌でもわかったつもりにさせられる。そんなわりと本気な展示です。

季節の記憶がワッと浮かび上がるような雰囲気。

コマツもこの歳になってやっと冬の色、とか夏の色。ゴールデンウィークの色みたいに、季節の光の違いみたいなものをやっと明確に認識できるようになった気がするのです。本当になんとなくですけれど。「もうなんか夏の日差しの色だよね!もう」なんて言って「いや、これは5月の色だよまだ。」なんて言われますがそんな物は誤差の範疇です。

そしてその季節の色、というか季節の雰囲気。光のてり方から、空の青さの具合から、緑の色から、何の花が咲いてるわけでもないけれど、色と光からスッと季節が入ってきて。虫の声やら、空気の澄んでいる具合やら、草の匂いやら、そんな自分の中にあるその季節の記憶がワッと思い起こされるような、そんな錯覚に陥りました。

まったく印象派ってピンと来ないジャンルの一つだったのですが、風景画に関してだけはその魅力に気付けたかなと思います。人物画はこれから目を肥やしていきます。頑張ります!


Ametsub - Repeatedly [Mille Plateaux]

おやすみなさい。

【箱男】混乱の中手探りで読み進める好奇心。マジでヤバい一冊【読書感想】

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駅の構内にシャネルの大きなショップバックを持った女子高生がいて、どうせお母さんに袋だけもらって、弁当やらジャージやらリコーダーやら入れてるんだろうと思って通りすがるときに、ショップバッグの中身が丸見えなんですよ。それでチラと中身が見えたのですが、綺麗に梱包されたシャネルの箱がはいってまして、池袋の北口。何かやましい物を感じます。けしからん!

こんばんは。コマツです。

箱男(安部公房)』を読みました。

箱男 (新潮文庫)

箱男 (新潮文庫)

 

砂の女』で安部公房に出会い、『笑う月』でこいつヤバいぞと感じ始めました。そしてこの『箱男』。決定打です。コマツの中で安部公房はヤバい認定されました。 

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めまぐるしく広がる意味不明さ。

時代とか、形式の問題もあると思いますが、とても難しく、読みにくいです。油断して読んでいると途端に意味不明に陥るし、油断していなかったとしても結局読み終わる頃には意味不明なんてこともザラにありそうです。

コマツは結局意味不明なまま読み終えてしまい、普段はあまり読まない解説まで読む始末。ただ解説を読んだところで理解が深まったかというと実はそうでもなくて、結局はその心もとない手がかりを頼りに繰り返し読んで理解を深めていくしか無い気がします。

この場でコマツのない頭を絞って薄っぺらな考察を述べたところで、あまり意味を成さないだろうし、そういうブログではないので考察などは控えます。短期間に同じ本を繰り返し読むのも苦手なので。なのでまず、一回読んで満足したいような人には確実にお勧めできません。周回プレー必須の作品です。

読み解きたいという欲求がムジムジと湧いてくる。

けれど、久しぶりに本気で文学の授業を受けた時のような、本気で文章を読み解いて考察したい欲のようなアドレナリンのようなものが、脳みそからムジムジと湧いてくる感じがあったのもまた事実なのです。

いつか余裕のあるときにもう一度手にとって読みたい。ではなく読まなければいけないと思わせる読後感。混乱必須の文章の中で自分なりに遭難せずに読破してみたいという好奇心がふつふつと湧き上がります。しかし生半可な気持ちで手を出すと大怪我というか、本当に高確率で積み本と化してしまう。そんな一冊です。

安部工房、本気でとんでもない作品ばかりですが、その読みにくさはお墨付きなのでチャレンジするときは頑張ってください。


DEAD (OFFICIAL VIDEO) - HUSKY LOOPS

おやすみなさい。

【読書】4月も末なので今月読んだ本の中で最高の本まとめる【復習】

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実家のトイレのカレンダーにはだいたい家族全員分の予定が記入してあるのです。誰がよる飲みに行くだ、何時からバイトだ、残業だ、朝早いだ、などです。妹が春から大学生になりオレンジデイズとは程遠いようなキャンパスライフを送っていることを兄として願っているのですが、4月の項に1日だけ「ハケン」と書いてあって、何の話だと思ったら、妹の派遣バイトの予定でした。それにしても、月に1日だけの派遣バイトって、それで大丈夫なのか女子大生。兄として少し心配です。

こんばんは。コマツです。

月末です。月末にはまだ早いですが。昨日に続き今日も今月読んだ本の復習です。今月は12冊読みました。ということになっております。先月よりちょっとペースダウンしたでしょうか。まぁ楽しく読めればそれが一番ということで。それにしても月に12冊って意外と読んでいてびっくりしました。本当か?これ。本当だ。これ。

圧巻の絶景と旅のリアルに乾杯!

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これまで幾多のカタギを終わりの見えない旅へといざなった問題作。そんな馬鹿な話あるか。と思いながらも読んでみたらまぁハマるハマる。終いには会社辞めて旅に出るという奇行には及ばなかったものの、酔った勢いで日本語学校の飲み会に乱入するくらいには強い異文化コミュニケーションに対するあこがれが芽生えました。ちょっと普段だと意識しづらい多様性とか、ふとした他人への親切とかコミュニケーション。そういったことに対する意識とか考え方を改めて見直させられる。世界は広い。こんな本の中の世界ですら広く感じるのだから本物はどんなに広いのだろうか。そんな憧れも抱かざるを得ません。

もう二度と読みたくないけれど最強の一作。 

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マジで長過ぎるし、物理的に分厚くて思いし、文庫本なのに何でこんなハードカバーみたいなんだ!なんて半ばキレそうになりながらも面白すぎて吐きかけた一作。舞台がリアルすぎて現実と工作することもしばしば、寝ぼけていればなおさら。それくらいリアルで現実味があるのだけれど、現実味があるからこそフィクション感がより誇張して見えるというか、それによって現実が歪んだりするさまに非常に快感を覚えるという奇跡。そして物語の最後にはしっかりとエピローグを儲けてちゃんと読者をあるべき所に着地させる優しさ。本当に読んでよかったと思いました。がもう二度と読みたくはないです!

すいません。ちょっと舐めてました。スゴい面白いですこれ。

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イン・ザ・プール』を読んで、あまりの軽さに「あぁこれは気楽に読めていいや!」とこの『空中ブランコ』も手にとったのですが、いやはやなにこれめちゃくちゃアツい。前作の軽さも保ちつつ、人間描写はちょっと掘り下げて、伊良部は放し飼いにして。するとホラ。気づいたらぐんぐん引き込まれるでしょ。と言った感じ。前作もこれもエンタメ的作品っていう雰囲気は変わらないのですが、明らかに進化しているし、その質もぐんと深くなってコクがあるという。素直に面白すぎてびっくりした一作。

じつはまだ未読の本が本棚にちらほら。とっとと消化して新しい本探しに行きます!


Rostam - Gravity Don't Pull Me (Official Video)

おやすみなさい。

【美術館】4月も末なので今月行った美術館を振り返ってみる【復習】

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いやー、ついに4月も終わりますね。まあだちょっと気が早いですが、ゴールデンウィークですよゴールデンウィーク。GWってやつですね。楽しみですねぇ!なにが楽しみって朝のラッシュ時に電車に乗らなくていいっていうのが一番の楽しみです。ウキウキポイント。今丁度、部屋の窓の向こうにあるマンションの廊下を、口笛吹きながら自宅に戻ってきた隣人よりもウキウキせざるを得ません。きっと彼もGWに向けてウキウキしているのでしょう。

こんばんは。コマツです。

4月も末ということで先月に習って行った美術館を振り返ってみようと思います。前回は厳選して3つ選んだのですが、今月はちょうど3つしか入ってないのでいいものも悪いものもそうでないものも振り返ってみようとおもいます。

写真集買えばそれでいいのでは?え、写真やってるの?じゃあ行きなよ。

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写真自体はとても綺麗で、収められた状況はとてもユニークで、ヌードがとても効果的にその幻想感を演出しているけれど、なんとなくそれだけで…。写真集とかスマホの待受とか、インスタグラムとか、タンブラーにあったら「わ、なにこれおしゃれな写真!シェアしよー!」ってなります。CDのジャケットになっていれば思わずジャケ買いしてしまう気持ちもわかるし、PVだったら思わずフルで鑑賞するでしょう。MTVとかYOUTUBEで。でもだからといってそれの大きいやつを美術館に観に行って楽しいかと言ったらマジでそうでもないというのが現実。でもそもそも蜷川実花とかの写真展にはハナから行きたいとも思わないし、やっぱりこれは個人の価値観の問題なのでしょうか。

俺らって江戸からなにも変わってないのかもしれないな。

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人生初の浮世絵の展示。最近国芳国貞とか若冲とか日本画の展覧会の情報を色んな所で目にするけれど、流行っているのでしょうか?それとも日本だからこういったたぐいのものは今まで目を向けなかっただけでわりと日本ではポピュラーなジャンルなのでしょうか?え、日本人って印象画フェチなんじゃなかったの!?混んではいたけれど、ちゃんと見れたし、楽しかったし、これを気にちょっとずつ日本も文化もちゃんと見てみようと思える展示でした。想像力の広がる楽しい展示でもありました。

圧倒的圧勝。もう終わっちゃったけど。

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まず美術館の中でもコマツ的にかなり好きな部類に入る横浜美術館の本気が見れたのではないかという感動。横浜美術館あってのスーパーフラットコレクション。そんな美術館と展示の超ウィンウィンな関係、展覧会の理想像が見れた気がしました。それでいて展示内容もとんでもなくカオスで、気づけば鼻息荒くして熱に当てられたような目で館内を駆けずり回ってました。マジでぶったまげた。2回行った『五百羅漢図展』に続いてまたしても村上隆に脳天叩きのめされた。そんな展示でした。

ゴールデンウィークまであと僅か。5月病も秒読みです。今から胸が高鳴りますね!


Fort Frances "Anonymous" - Live in Another Country

おやすみなさい。